【犬・猫】異物誤飲の対処法&症例紹介「お手玉、紐、石、餌木etcの誤飲」

滋賀県 草津市/大津市のエルム動物病院です。

今回は「異物誤飲」の実際の症例を多数ご紹介します。

 

■異物誤飲とは?


好奇心旺盛のわんちゃん、ねこちゃんは思いもよらない物を口にしてしまいます。飲み込んではいけない異物を飲み込んでしまうことを異物誤飲誤食といいます。異物の種類によっては消化管閉塞や中毒を起こすことがあります。これらは、命にかかわる危険性があるので注意が必要です。

 

 

■異物誤飲でよくあるもの


【身近にあるもの】

・竹串

・トウモロコシの芯

・果物や梅干の種

・石

・靴下などの布類

・ひも

・乾電池

・観葉植物

など

 

【人の食べ物で動物にとっては中毒となるもの】

・たまねぎ・ねぎ・にら・にんにく類

・チョコレート、ココアパウダー等

・カフェインが含まれているもの(コーヒー、紅茶、日本茶等)

・キシリトール

・レーズン、ぶどう

・アボカド

・ナッツ類

など

 

ワンちゃんは臭いのある物を丸のみするケースが多く、猫ちゃんは紐状のものを遊びながら誤食することが多いです。食べたもの、食べた量によって緊急度合いや危険度合いが変わってきます。

 

 

■異物誤飲の症状


<消化・通過できない異物>

・食欲不振

・元気消失

・嘔吐

・下痢

・よだれが多くでる

・ゲップ

・震える

・便秘

・血便

などが多いです。

消化管閉塞(胃や腸などの消化管に異物が詰まってしまうこと)が起きると危険な状態となり、早急な対応が求められます。

 

<薬物・殺虫剤などの異物>

・中毒による消化器症状(下痢・嘔吐など)

・中毒による神経症状(けいれん、意識を失うなど)

・中毒による肝臓・腎臓などへの障害

 

 

■異物誤飲の治療法


治療は大きく3つに分かれます。催吐処置・内視鏡による摘出・手術による摘出です。誤飲や誤食をした疑いがある場合、飲み込んだものを確認できると診察に役立ちます。触診や腹部レントゲン検査、エコー検査、造影検査をした後、適切な治療法を選択していきます。

 

<催吐処置>

異物を摂取してからまだ時間がたっておらず、まだ胃に存在し、嘔吐させることで解決できそうな場合には催吐処置を実施します。催吐処置は無麻酔で実施可能です。催吐作用のある薬剤を血管内に注射することで嘔吐を促します。

 

<内視鏡による摘出>

催吐では胃から出せない場合、串などで催吐させるのが危険な場合、まだ小腸の入り口に異物がある場合などは内視鏡にて摘出を試みます。内視鏡にて摘出が可能な場合には麻酔は必要となりますが手術の必要がなく、基本は日帰りでの治療が可能です。

 

<開腹手術による摘出>

内視鏡で摘出不可能なサイズや形、既に小腸の奥まで移動してしまっている場合などは開腹手術が必要となります。お腹を開けて、異物の存在する胃や腸の一部を切開し異物を取り出します。閉塞期間が長い場合や消化管の損傷が著しく壊死を起こしている場合などは消化管の一部を切除・吻合することが必要となる可能性があります。手術を行った後は入院が必要となります。

 

 

■実際の異物誤飲症例


<症例:催吐処置>

まずは催吐処置で異物摘出できた症例を紹介します。

 

■お手玉

犬 お手玉 誤飲

 

■靴下

犬 靴下 誤飲

 

■紐

猫 紐 誤飲

 

 

<症例:アップルウォッチの内視鏡摘出>

アップルウォッチのベルトを誤食したとして来院したMIXのワンちゃん。

レントゲン写真を撮ると胃と腸に大量の異物が確認できます。

犬 アップルウォッチ 誤飲 レントゲン

 

催吐処置をして吐けるだけ吐いてもらいました。

犬 アップルウォッチ 誤飲

 

2日後に吐き気があるということで再来院してもらいました。

改めてレントゲン写真を撮ると、吐ききれなかった異物が確認できます。

内視鏡での異物摘出を実施することになりました。

犬 アップルウォッチ 誤飲 レントゲン2

 

内視鏡で異物キャッチの格闘中です。

犬 アップルウォッチ 誤飲 内視鏡

 

ようやく異物を摘出できました!

犬 アップルウォッチ 誤飲 内視鏡2

 

ここからは実際の手術症例をご紹介します。

手術中の写真もあるため、ご了承いただける方のみお進みください。

 

<症例:開腹手術による石の摘出>

ロットワイラーのワンちゃん。

健康診断でレントゲン検査をした際に、胃の中に異物を確認しました。元々、石を食べてしまう子だったため、今回も石の可能性が高いため様子見をしました。1週間くらいすると便中に石が出てきましたが、未だに4cmほどの石がある状態だったため、催吐処置をするも石は出てこず…

犬 異物 石②犬 異物 石1

 

硬くて大きい石のため、内視鏡での摘出は困難と判断し、開腹手術による摘出を実施し、胃を切開して、コンクリートのような石を摘出しました。

犬 石 誤飲 手術1

 

摘出後は丁寧に縫合していきます。

犬 石 誤飲 手術2 犬 石 誤飲 手術3 犬 石 誤飲 手術4

 

1時間ほどで手術が終わり、1泊入院した後、翌日元気に退院しました。

犬 石 誤飲 手術5

 

 

<症例:開腹手術による餌木の摘出>

イカ釣りのルアー(餌木)の誤飲で来院されたゴールデンのワンちゃん。レントゲンを撮ると、はっきりと餌木が写っています。針がついていることから催吐処置や内視鏡ではなく、開腹手術を行いました。

犬 餌木 誤飲 レントゲン犬 餌木 誤飲 レントゲン2

 

腸の中に何やら異物がありそうです。

犬 餌木 誤飲 手術1

 

切開してみると、餌木らしき異物を確認。

犬 餌木 誤飲 手術3

 

針が付いているため、消化管内に傷や炎症が無いか心配でしたが、大きな問題はなく、翌日元気に退院しました。

犬 餌木 誤飲 手術4

 

異物を誤飲してしまわないように、お家の中にワンちゃんや猫ちゃんが飲み込む可能性のある物を室内に置かないようにしましょうね!

 

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