犬猫も人も要注意!マダニが媒介するSFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
滋賀県草津市/大津市のエルム動物病院です。
今回はマダニが媒介する「SFTS(重症熱性血小板減少症候群)」についてご紹介します。
■SFTSとは?
SFTSとはSevere Fever with Thrombocytopenia Syndrome(重症熱性血小板減少症候群)の頭文字です。SFTSウイルスを保有しているマダニに刺されることにより感染するマダニが媒介する感染症です。
日本には47種のマダニが生息しているとされており、現在までにフタトゲチマダニ、ヒゲナダマダニ、オオトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニからSFTSウイルスの遺伝子が検出されています。
マダニに刺されたことで人や犬、猫に感染するだけでなく、稀な事例ですが、SFTSを発症した犬や猫から人へ感染する事例も報告されています。発症している動物の体液(唾液、血液、便、尿等)に直接触れることで、感染する可能性があります。
外に行く飼い犬・猫や保護した野良猫にマダニがついているのを確認した時は、手袋や防護衣・メガネを着用したうえで除去する必要がありますが、皮膚に食らいついているマダニはくちばしを差し込んでセメント用物質で抜け落ちないようになっているので、無理すると、首がちぎれたり体が破裂してSFTSウィルスが飛び散るリスクがありますので、すぐに動物病院を受診することをお勧めします。
また、2023年には、国内で人から人への感染も報告されています。SFTSに感染した90代の患者を診察した20代の男性医師が、最初の接触から11日後に発熱し、その後、SFTSと診断されました。ウイルスの遺伝子検査で90代の患者と同じウイルスと考えられることなどから、人から人への感染と診断されました。
SFTSは6~14日の潜伏期の後に、発熱や消化器症状(嘔吐、腹痛、下痢など)を主な症状とし、人の致死率は10~30%と言われています。
すなわち、感染した人は平均で5-6人に一人は亡くなる凄まじい死亡率の病気ということになり、かなり気をつけないといけない病原体です。
■SFTSの症状
・発熱
・消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)
・頭痛
・筋肉痛
・意識障害や失語などの神経症状
・リンパ節腫脹
・皮下出血や下血などの出血症状
などの症状がみられます。
■犬猫、人のSFTS発症報告
SFTSの発症報告は2017年4月に猫、2017年6月に犬の発症が確認されており、それ以降は国内では継続的に犬猫のSFTSの発生が確認されています。国立感染研究所によると、日本における猫の致命率64.7%。犬の致死率は26%と非常に高いです。
また、2023年2月に国立感染研究所から発表された報告によると、2022年9月までに、猫560症例、犬36症例がSFTSと確定診断されています。あくまでも確定診断の症例数なので、実際はさらに多くのSFTS症例がいる可能性はあります。
2022年7月31日時点で、発症動物から獣医療従事者への感染が10例確認されており、その他にも発症動物から飼い主様への直接感染も確認されています。
人では、2024年1月31日現在、全国で939症例のSFTS発生の届け出があります。滋賀県でも届け出があり、SFTSウイルスを持ったマダニがいる可能性があります。
■SFTSの治療
現在、残念ながらSFTSに有効な治療方法は確立されていません。
症状に対して、対症療法を行っていくことになります。
また、人への感染、他の動物への感染を防ぐため、隔離が必要です。
症状が改善した後も、ウイルス消失には時間がかかると考えられているため、排泄物等の取り扱いには注意が必要です。
■SFTSの予防
SFTSはマダニの吸血によって感染します。
そのため、マダニへの対策がとても重要になります。
マダニのピークシーズンは、春と秋の年2回です。
そのため、年間を通じて定期的なマダニ対策をしましょう。
<マダニ予防>
①愛犬・愛猫に毎月ノミ・マダニ駆虫薬を投与する
実際に当院では今年4月時点で、マダニ被害にあったワンちゃん・ネコちゃんが数件来院しています。マダニ被害を防ぐために、ノミ・マダニ駆虫薬の投与は欠かせません。
当院では3月~12月の予防を推奨しています。桜が咲く少し前には予防を始める!と覚えてください。
但し、室内のカーペットなどに潜んでいる可能性はあるので、冬場も注意が必要です。特にマダニの濃厚地帯など、ライフスタイルによっては通年予防を推奨する場合もございます。
当院では食べるタイプ、背中に付けるタイプなど多数の駆虫薬を取り扱っています。
マダニ濃厚地帯に住んでいる、またはお出かけする場合には、飲ませるタイプ・背中に付けるタイプの両方を使ってもらうことで、より万全な予防効果が期待できます。
②草むらや山など、マダニが生息する場所に注意
マダニは森や野山だけでなく、公園や河川敷など、草や木のある身近な場所にも潜んでいます。飼い主様ご自身の対策としては、マダニが生息していそうな場所では肌の露出が少ない服装をしましょう。
愛犬・愛猫を散歩させるなどの場合は、なるべくマダニが生息していそうな場所を避けましょう。散歩から帰った際には、飼い主様ご自身・犬猫ともにマダニに咬まれていないかチェックしましょう。
もしもマダニに咬まれていた場合は無理に引き抜こうとせず、人は医師(皮膚科)、ワンちゃん・ネコちゃんは獣医師の診察を受けましょう。
その他、当院の予防についてはコチラから