【犬】ヒゼンダニが原因となる疥癬

滋賀県草津市/大津市のエルム動物病院です。

今回は「犬の疥癬」についてご紹介します。

 

■疥癬とは?


疥癬は、ヒゼンダニが感染して発症する皮膚の病気です。強いかゆみを伴い、かゆみからくる心的なストレスが大きいことが特徴です。また、感染力が非常に強い寄生虫ですので、疥癬の犬と一緒に暮らしている犬がいた場合は細心の注意を払わなくてはいけません。

 

ヒゼンダニの大きさは0.2〜0.4ミリと非常に小さく、肉眼で確認することはできません。ヒゼンダニは表皮内に掘ったトンネルで生活し、メスはトンネル内で産卵します。卵は3〜10日で幼虫に孵化し、孵化した幼虫はフケや垢などを食べて成虫になります。かゆみの原因は、ヒゼンダニがトンネル内に出した糞や分泌物です。

 

また、疥癬は人獣共通感染症(ズーノーシス)で、人に対しても非常に強いかゆみを引き起こします。

 

犬疥癬虫体

<画像参照>犬の皮膚科学/監訳 岩崎利郎

 

■疥癬の症状


犬の疥癬症は、角化型疥癬とアレルギー型疥癬の2種類に分けられます。角化型皮膚炎は多量のフケを伴い、アレルギー型疥癬ではアトピー性皮膚炎のような皮膚炎が見られます。以下のような症状が現れます。

 

<疥癬の主な症状>

・激しい皮膚のかゆみ

・炎症やかさぶたを伴うかき傷や噛み傷

・出血を伴う潰瘍

・脱毛

・フケや多量の黄色がかったかさぶた(※主に角化型疥癬)

・顔面(特に耳)、腹部、胸部、肘、かかとで起こりやすい

 

症状が重くなると、夜も眠れないほどのかゆみや不快感によるストレスで、食欲減退や体重減少、うつ病のような症状がみられることもあります。

 

 

■疥癬の原因


疥癬は、ヒゼンダニに感染している動物と接触したり、ヒゼンダニに汚染されたものに接触したりすると感染します。

疥癬の症状が進行していくと、フケやかさぶたが多量に出ます。体を振ったり、掻いたりした時にフケやかさぶたが飛び散り、直接的な接触がなくてもそこから寄生することもあります。そのため、多頭飼育の場合や、ペットホテル、ドッグランといった犬が多く集まる施設を利用する場合は注意が必要です。

 

ヒゼンダニが感染してから症状が出るまでの潜伏期間は2~3週間です。この間は感染していても症状がない期間なので、気づかないうちにほかの動物にも感染している可能性があります。寝床や敷物、ブラシなどについている可能性があるので、消毒や処分するなど感染を広げないようにしましょう。

 

 

■疥癬の検査&診断


■皮膚搔爬検査

皮膚症状が見られる犬の皮膚を削り取り、ヒゼンダニや卵がないか顕微鏡で観察します。1回の検査では見つからない場合が多いため、繰り返し検査を行う場合があります。また、ヒゼンダニや卵が見つからなくても試験的に薬を投与する場合もあります。

 

 

■疥癬の治療


①駆虫薬

疥癬の治療にあたっては、ヒゼンダニに駆虫効果のある薬(イベルメクチン、セラメクチン、ミルベマイシンオキシムなど)を使用します。これらは、犬フィラリア症の予防薬の成分と同じものです。

これらの駆虫薬は基本的に虫卵には効果がないため、1回目の駆虫薬の投与では虫卵が残ってしまいます。卵が孵化し、再び産卵するまでの間にもう一度駆虫することが大事です。

疥癬の治療が目的となる場合は投与量が投与頻度に注意が必要なため、自己判断での使用は避け、獣医師に相談しましょう。

 

②抗菌薬

疥癬が慢性化し、細菌の二次感染を伴っている場合は、必要に応じて抗菌薬も投与します。

 

また、多頭飼いの場合は再感染や蔓延を防ぐために、同居している犬たちにも予防的に駆虫薬を投与してください。また、飼育ケージやタオルなどを常に清潔に保ち、飼育環境の整備も併せて行いましょう。

 

 

■症例


犬の胸側の拡大像。

偽水疱、黄色性痂疲、表皮の紅潮、脱毛がみられる。

<画像参照>犬の皮膚科学/監訳 岩崎利郎

 

 

猫も疥癬に罹患するため、症例をご紹介します。

顔面および東部の病変。

自己誘発性の脱毛と表皮剥離を伴う丘疹。

 

顔面と耳に生じた脱毛と鱗屑および痂疲形成を伴う病変。

<画像参照>カラーアトラス 新・小動物の皮膚病/松浦哲舟・監修

 

 

■最後に


疥癬はヒゼンダニの感染を防ぐことが一番の予防方法です。

ワンちゃんの生活環境の掃除とシャンプーを定期的に行いましょう。

 

 

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