【犬】甲状腺機能低下症とは
滋賀県 草津市/大津市のエルム動物病院です。
今回は「犬の甲状腺機能低下症」についてご紹介します。
■甲状腺機能低下症とは?
甲状腺は、甲状軟骨(ヒトでは、のどぼとけといわれます。)のすぐ下にある、甲状腺ホルモンを分泌する内分泌器官です。甲状腺ホルモンとは甲状腺で産生・分泌される、代謝の促進などに関わっているホルモンです。
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる病気です。甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは全身の代謝をよくしています。猫ではほとんど見かけませんが、犬では時々見つかるホルモンの病気です。大型で純血の犬に多いと言われています。甲状腺機能低下症になると、なんとなく元気がなくなって、あまり食べないけれども、太ってくるという症状、皮膚病などを引き起こすこともあります。人では、甲状腺の病気は女性がかかりやすいといわれていますが、犬ではとくに性差はありません。
■甲状腺機能低下症の症状
犬の甲状腺機能低下症の症状は多岐にわたり、個体によって異なることがあります。一般的な症状には以下のようなものがあります
【全身症状】
元気がなくなる、歩きたがらない、立ち上がるのを嫌がる、肥満、低体温、心拍数の低下など
【皮膚症状】
皮膚が分厚くなる、上まぶたや唇が厚くなって悲しげな顔になる、脱毛(特に尾や胴体部分)、皮膚が脂っこくなる、フケが増える、皮膚が黒くなる(色素沈着)、皮膚病が治りにくいなど
【神経症状】
ふらつく、顔面神経の麻痺、刺激しないと起きない(嗜眠)、発作、昏睡など
上記の症状は甲状腺ホルモンの不足によって引き起こされ、代謝の調整やエネルギー産生に影響を与えます。
■甲状腺機能低下症の原因
犬の甲状腺機能低下症の90%以上の主要な原因は、甲状腺の自己免疫疾患によるものです。この疾患により、免疫系が誤って甲状腺組織を攻撃し、甲状腺ホルモンの産生が減少します。他にも先天的な甲状腺機能低下症や、甲状腺の腫瘍、下垂体や視床下部(脳にある、甲状腺を刺激するホルモンを出す臓器)の腫瘍や外傷などが原因となることもありますが、非常に稀です。
かかりやすい犬種や年齢は?
大型で純血の犬に多いと言われています。現在の日本での犬種ごとの飼育件数を考慮すると、ゴールデン・レトリバー/トイ・プードル/柴犬/ミニチュア・シュナウザー/ビーグル/シェットランド・シープ・ドッグ/アメリカン・コッカー・スパニエルが発症しやすいと言われています。5歳以上の中~高齢での発症が多いですが、1~15歳以上まで幅広い年齢で発症します。
■甲状腺機能低下症の治療
【投薬】
足りなくなった甲状腺ホルモンを補充するために、甲状腺ホルモンの投薬を行います。投薬から数週間で改善する症状もありますが、数か月を要するものもあります。甲状腺の機能自体を回復させることは難しいため、基本的には生涯飲み続けます。うまく機能維持できれば、健康な犬と同様の生活ができます。
また、定期的に血液中の甲状腺ホルモン濃度を測定し、投薬量が適量かどうかを確認する必要もあります。甲状腺腫瘍の場合は、腫瘍に対する化学療法、外科手術(摘出)、放射線療法なども検討します。
■甲状腺機能低下症の予防
残念ながら甲状腺機能低下症は有用な予防法がありません。そのため、早期発見、早期治療が大切です。
元気がない、歩きたがらない、たくさん食べていないのに太る、脱毛がある、皮膚病が治りにくいなど、気になる症状があれば早めに診察を受けましょう。
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