【猫】甲状腺機能亢進症とは
滋賀県 草津市/大津市のエルム動物病院です。
今回は「猫の甲状腺機能亢進症」についてご紹介します。
■甲状腺機能亢進症とは?
甲状腺ホルモンは、のどにある甲状腺から分泌されるホルモンです。全身の細胞に作用し、代謝を活性化させる役割があります。甲状腺ホルモンの分泌量が異常に増加すると、代謝が上がりすぎて全身に過剰な負荷がかかります。
猫の甲状腺機能亢進(こうしん)症は、「元気や食欲があるのに痩せてくる」という症状が特徴的な病気です。高齢の猫でみられることが多く、日本では7歳以上の猫の10%以上は、甲状腺機能亢進症だろうといわれています。新陳代謝をコントロールする甲状腺ホルモンが過剰に分泌される事で、たくさん食べるのに痩せていく、水の飲む量が増えた、性格が攻撃的になった、眼がらんらんとしている、などといった事が見られます。
初期のうちは病気にもかかわらずむしろ健康そうに見えてしまいますので、あらかじめ知識がないと気付くのは難しいかもしれません。高齢の猫でとてもよくみられる病気であり、この病気は他にも、腎臓や心臓に悪影響を与えている場合もあるため、病気の診断がされたら出来るだけ全身の検査を行いましょう。治療をすればより健康に長く生きられるようになりますので、ぜひ知っておいていただければと思います。
■甲状腺機能亢進症の症状
猫の甲状腺機能亢進症では以下のような症状がみられます。
・体重減少
・食欲亢進
・行動の変化(攻撃性が増す、異常に活発になる、異常に鳴くなど)
・嘔吐
・下痢
・多飲多尿
・食欲低下
・元気消失
「活発でよく食べるけど痩せてくる」という症状が典型的ではありますが、必ずそうなるわけではありません。元気や食欲がなくなる場合もありますし、嘔吐や下痢が主症状といった場合もあります。また、血圧が高い状態になります。正常な甲状腺は外から触ることはできませんが、大きくなった甲状腺は首の上のほうを外から触ってもわかるようになることもあります。
■甲状腺機能亢進症の原因
その原因は明らかになっていませんが、加齢や食事内容、飼育環境といった要素が関係しているといわれています。それらの要素から、原因には、甲状腺の過形成、甲状腺腫瘍、甲状腺ホルモン薬の過剰投与、などがあります。
■甲状腺機能亢進症の診断
高齢の猫において上述したような症状がある場合は、甲状腺機能亢進症が疑われます。ただし、これらの症状からは他の病気(腎臓病、糖尿病、膵炎、腸炎、リンパ腫、脳疾患など)も考えられますので、最初から決めつけずに全体的に調べていく必要があります。
甲状腺機能亢進症は、主に触診、超音波検査、血液検査によって診断します。
・触診、超音波検査
のど(気管の両脇)にある甲状腺が腫大していないかどうかを触診や超音波検査で確認します。
・血液検査
一般的な項目に加えて甲状腺ホルモンを測定します。数値が高ければ甲状腺機能亢進症と確定できます。
・その他の検査
他の病気がないかどうか、また、甲状腺機能亢進症によって引き起こされる「高血圧」「心筋肥大」「眼の異常(眼底出血、網膜剥離)」などがないかどうかを確認するために、超音波検査、X線検査、尿検査、眼科検査、血圧測定などを行います。
■甲状腺機能亢進症の治療
現在主に行われている治療には外科的治療と内科的治療があります。最近では甲状腺機能亢進症用の療法食も出てきました。
①内科療法(内服薬)
基本的に最初に選択されている治療法です。抗甲状腺薬を用いて治療をしていきます。お薬はホルモンを調節するお薬なので、その子それぞれで代謝量が違うため投薬量が変わってきます。また、見た目でわからない副作用が出ていることもあるため、お薬を始めてから2~3週間後に1回目、1回目の検査の数値が安定していたら一か月以内に再検査するという方法をとり、薬の効果をしっかりと判断していきます。
②外科療法
外科的治療は、根本的な治療方法で、手術によって異常な働きをしている甲状腺を取り除きます。その時の状況により、左右両方とも取ることも、片方だけの場合もあります。手術ができる施設は限られているため、専門の動物病院へ紹介いたします。
■甲状腺機能亢進症の予防
【健康診断の重要性】
高齢の猫では、半年〜1年に1回の健康診断(特に血液検査)をお勧めします。甲状腺ホルモンは必ず測定する項目ではありませんが、疑わしい症状がある場合には測定したほうがいいでしょう。
また、甲状腺機能亢進症があると肝臓の数値(ALT、ALP)が高くなる傾向がありますので、肝臓の数値が高かった場合には甲状腺ホルモンを追加で測定するといいでしょう。
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